ヌートリアの「完全駆除」はなぜ難しいのか? 欧州が選んだゾーニング戦略
欧州でのヌートリア対策:「根絶」から「封じ込め」へ
ヌートリアは南米原産のげっ歯類で、20世紀に毛皮産業の目的で世界各地に持ち込まれた外来種です。逃亡・放獣によって野生化が進み、現在は欧州・北米・アジア各地で定着が確認されています。欧州では早くから問題視され、「完全駆除(根絶)」を目指す取り組みが各国で行われてきました。しかし現在では、多くの国がその戦略を大きく転換しています。
イギリスは成功、大陸欧州は行き詰まった
成功の先例はイギリスです。かつてイングランド東部のノーフォーク・ブロードズを中心にヌートリアが生息していましたが、1981年から政府主導の根絶プログラムが始まり、約10年の集中的な捕獲活動によって1989年ごろまでにほぼ完全に駆除されました。
成功の鍵は「個体数がまだ少なく、生息域が限られていた」ことです。一方、フランス・イタリア・ベルギー・スペインなど大陸欧州の国々では、すでに個体数が数十万〜百万規模に膨らんでおり、完全根絶は現実的ではないと判断されるようになりました。
「高リスクエリアだけを徹底的に守る」という発想
封じ込めに転換した欧州の対策で注目されるのがゾーニング戦略です。これは、ヌートリアが侵入した場合に特に大きな被害が生じる「高リスクエリア」——農地・湿地・希少種の保護区など——をあらかじめ地図上で指定しておき、そこに入り込んだ個体を重点的・集中的に駆除する考え方です。
全土にまんべんなく資源を投入するのではなく、「守るべき場所に入らせない」ことに絞り込むことで、限られた予算と人員で効果的な防除が成立します。
ゾーニング戦略はリアルタイムの「地図情報」で成り立つ
この戦略を機能させるうえで欠かせないのが、出没情報の継続的なモニタリングです。「どのエリアに個体が現れているか」をリアルタイムに近い形で把握することで、侵入の初期段階に素早く対応できます。
逆にいえば、地図上に目撃情報が蓄積されている地域ほど、「どこが高リスクエリアになりつつあるか」を早期に察知しやすくなります。市民一人ひとりが「近くの川でヌートリアを見かけた」という情報を報告・記録することが、ゾーニング判断の根拠となるデータの一部になりうるのです。
目撃情報を地図で共有することの意味
ヌートリアの目撃情報を地図上に記録していくことは、まさにこのゾーニング戦略の基盤を支える行動です。「あの川沿いに最近よく出ている」「昨年はいなかった場所に現れ始めた」という情報の集積が、行政や防除団体がエリアの優先順位を判断するための材料になります。
近くでヌートリアを見かけた際は、地図への報告が地域全体の防除活動につながる一助になります。
気になること
イギリスはなぜヌートリアの完全駆除に成功できたのですか?
1981年から政府主導の根絶プログラムが始まり、約10年の集中的な捕獲活動によって1989年ごろまでにほぼ完全に駆除されました。成功の鍵は「個体数がまだ少なく、生息域がノーフォーク・ブロードズ周辺に限られていた」ことで、早期対応が可能だったためです。
フランスやイタリアでヌートリアの完全駆除が難しい理由は何ですか?
すでに個体数が数十万〜百万規模にまで膨らんでおり、広域に定着しているため完全根絶は現実的ではないと判断されています。こうした国々では「守るべき場所に入らせない」ゾーニング戦略に切り替えて対応しています。
ゾーニング戦略とはどのような害獣管理の考え方ですか?
農地・湿地・希少種の保護区など、ヌートリアが侵入した場合に特に大きな被害が生じる「高リスクエリア」を地図上で指定し、そこに入り込んだ個体を重点的・集中的に駆除する考え方です。全土に均等に資源を投入するのではなく、限られた予算と人員で効果的な防除を実現します。
ゾーニング戦略において市民の目撃情報がなぜ重要なのですか?
「どのエリアに個体が現れているか」をリアルタイムに近い形で把握することが戦略の前提となります。市民が「近くの川でヌートリアを見かけた」という情報を記録することで、どこが高リスクエリアになりつつあるかを早期に察知でき、ゾーニング判断の根拠データとなります。