ニュージーランド「プレデター・フリー 2050」── 地図で国土全体の害獣を管理する挑戦
「2050年までに国全体から外来種をなくす」という目標
2016年、ニュージーランドは世界的に類を見ない目標を発表しました。「プレデター・フリー 2050(Predator Free 2050)」と呼ばれるこの計画は、ポッサム・ネズミ(クマネズミ・ノルウェーネズミ)・オコジョ(ストアット)などの外来肉食性動物を、2050年までに国土全体から排除しようというものです。
ニュージーランドの固有種——飛べない鳥のキーウィやカカポ、希少なトカゲ類など——は、かつて天敵のいない環境で何百万年もかけて進化してきたため、これら外来種の捕食に対してほぼ無防備です。外来種による固有生態系への被害は深刻で、この挑戦は自然保護上の最重要課題のひとつとなっています。
「地図に記録する」がプロジェクトの基盤
プレデター・フリー 2050 の実施において重要な役割を担っているのが、オンラインマッピングプラットフォームの活用です。代表的なのがTrap.NZです。全国の地域グループ・個人が、トラップ(捕獲装置)の設置場所・捕獲結果・メンテナンス記録をオンラインの地図上に登録・共有できるプラットフォームです。
- どのエリアにトラップが設置されているか
- どの種が、どこで、どれだけ捕獲されているか
- まだ対応が手薄なエリアはどこか
こうした情報を全国規模で可視化することで、コミュニティグループ・行政・研究者が連携して優先エリアを判断し、効率的に活動を展開できます。
コミュニティ参加がスケールを生む
プレデター・フリー 2050 のもう一つの特徴は、地域コミュニティが主体となっていることです。政府が旗振り役を担いつつも、実際の捕獲活動の多くは地域ボランティア・学校・企業が担っています。
「近所でネズミを捕まえる」という個々の活動が、地図上のデータとして積み重なり、国全体の目標に向かって機能する仕組みです。専門機関だけが動くのではなく、市民一人ひとりの記録と報告が大きなプロジェクトの基盤をつくっています。
また、Goodnature社が開発した「A24」などのスマートトラップは、捕獲が起きると自動で通知する機能を持ち、捕獲データが自動的に地図に反映される仕組みも取り入れられています。
身近な情報共有から始まること
ニュージーランドの取り組みが示しているのは、「地図に記録する」という行動が、個人の記録を超えた社会的な価値を持つということです。害獣・害虫の目撃情報を地図に残すことは、地域全体の状況を把握し、より的確な対策につなげるための第一歩になります。
国が違えども、目撃情報を集積することで対策の優先度を判断するという考え方は共通しています。お近くで見かけた情報は、ぜひ地図に残してみてください。
気になること
ニュージーランドの「プレデター・フリー 2050」とはどのような計画ですか?
2016年に発表された計画で、ポッサム・ネズミ(クマネズミ・ノルウェーネズミ)・オコジョなどの外来肉食性動物を2050年までに国土全体から排除することを目指しています。飛べない鳥のキーウィなど天敵のいない環境で進化してきた固有種を守るための、世界的にも類を見ない取り組みです。
Trap.NZとはどのようなプラットフォームですか?
全国の地域グループや個人がトラップの設置場所・捕獲結果・メンテナンス記録をオンラインの地図上に登録・共有できるプラットフォームです。どのエリアにトラップがあるか、どの種がどこで捕獲されているか、対応が手薄なエリアはどこかを全国規模で可視化しています。
プレデター・フリー 2050 でコミュニティ参加が重視されているのはなぜですか?
政府が旗振り役を担いつつも、実際の捕獲活動の多くは地域ボランティア・学校・企業が担っています。「近所でネズミを捕まえる」という個々の活動が地図上のデータとして積み重なり、国全体の目標に向かって機能する仕組みになっているため、コミュニティ参加なしにはスケールしない設計になっています。
この取り組みから日本への示唆はありますか?
「地図に記録する」という個人の行動が、個人の記録を超えた社会的な価値を持つという点が最大の教訓です。害獣・害虫の目撃情報を地図に残すことで地域全体の状況を把握し、より的確な対策につなげるという考え方は、国が違っても共通しています。